2. 調整池は何のためにあるのか?
農業用水:農業用水確保が干拓事業の最大看の名目です。しかし、実際には本明川河口のP1地点(図1-2)の水のみが新干拓農地に配給されていて、調整池本体の水は塩分が高いこともあって基本的に使われていません。給水量は年間40万㌧で、潮受け堤防からの排水量(4億㌧以上)の0.1%にも達しません。
元々、諌早地方の降水量は全国平均より2割ほど多く、露地栽培野菜に対しては過剰な給水は必要ありません。例外として、旧干拓地の一部では、梅雨直後から9月にかけての塩分低下期に、塩分に強い水稲が栽培されています。しかし、有毒アオコに晒されるという問題をかかえています。
防災:大型公共工事の例に漏れず、防災効果が目的に追加されました。たしかに、潮受け堤防は高潮被害が予想される時の干拓農地の保護には役立つ可能性はあります(潮回り次第)。しかし、潮受堤防中央展望所には、諌早大水害を防ぎ得るかのようなパネルが展示されています。諌早大水害は山からの出水であり、10km以上離れた潮受け堤防に防災効果は期待出来ません。防災こそ正確な情報が求められます。このような不正確な宣伝は防災上問題です。犠牲者に対しても倫理的道徳的に問題ではないでしょうか。