よみがえれ!有明訴訟弁護団と日本環境会議から声明が出されました!
よみがえれ!有明訴訟弁護団と日本環境会議から声明が出されました。
弁護団声明は農水省に送られました。以下、紹介します。
-声明-
福岡高裁が「和解協議に関する考え方」で示した和解協議に、
国が真摯に対応することを求める
2021年5月11日
よみがえれ!有明訴訟弁護団
1 4月28日の請求異議差戻審弁論終了後に行われた進行協議で、福岡高裁は「和解協議に関する考え方」を文書で示した。わたしたちは、この文書で示された裁判所の考え方を歓迎する。
2 過去、長崎地裁や福岡高裁において行われた和解協議は、非開門を前提とし、これを被害に苦しむ漁民に対して無理矢理に押しつけようとしたあまり、ことごとく失敗した。これに対し、今回、裁判所が示した和解協議は、そうした前提なしに協議を開始しようとしている。現在、国はいわゆる100億円基金案に固執しているが、裁判所は、それを絶対視することなく、「利害の対立する漁業者・農業者・周辺住民の各団体、各地方自治体等の利害調整と、これに向けた相応の『手順』が求められている」と述べて、実質的再検討を求め、国による非開門の押しつけを牽制した。
また、わたしたちは、今日の事態を招いた最大の責任は事業者の国であることを指摘してきたが、今回、裁判所はその国の特別の責任と国の役割について、次のように言及している。すなわち、「国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責とを有する控訴人(注・国のこと)の、これまで以上の尽力が不可欠」と述べて、「本和解協議における控訴人(国)の主体的かつ積極的な関与を強く期待する」と明記した。もはや国は傍観者ではいられない。
国は、裁判所の指摘した紛争解決に向けた特別の責任と役割を真摯に受け止め、裁判所の設定する和解協議の場に着くべきである。
3 今回、裁判所が初めて示した和解協議の必要性、進め方、意義、目的は、すばらしいものである。
裁判所は、紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決及び将来に向けての確固とした方策の必要性と可能性を意識し、判決だけではそのような広い意味での解決には寄与することができず、話し合いによる解決の外に方法はないと断言した。
また、和解協議についての社会的要請、当事者や関係者からの話合い解決への期待という、この間の訴訟外の動きをきちんと意識して、「現在、和解解決の前提となる素地も、これまでの経緯の中で最も高まった状況にある」と現状をきちんととらえている。
そして、和解協議にあたっては、当事者のみの狭い議論に終始することなく、「当事者双方に限らず、必要に応じて利害関係のある者の声にも配慮しつつ」、「利害の対立する漁業者・農業者・周辺住民の各団体、各地方自治体等の利害調整と、これに向けた相応の『手順』」と述べ、幅広い意見に耳を傾けながら進めるべきことを示し、この和解協議が広い意味での関係者に門戸を開くのものであることを確認している。
以上の必要性と進め方で行われる和解協議の意義、目的について、裁判所は「国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたるより良き方向性を得る」ものであると述べ、この和解協議を歴史的なものにする意欲を示した。
このような意義、目的で行われる和解協議は、国民全てが歓迎できるものである。
4 すでにこの間、連休をはさんだ短期間の間に、有明海4県漁民の集いで採択された決議やJCFU全国沿岸漁民連絡協議会の声明、日本環境会議の声明などで、今回の和解協議を歓迎し、国は和解協議の場に着くべきであるとの意見が表明された。地元の「諫早湾干拓問題の話し合いの場を求める会」からは、諫早市長に対し国に福岡高裁の「和解協議に関する考え方」に沿った和解に積極的に応じるように要請すべしとする要望書が提出された。わたしたちは、このような動きが今後も続くとの情報を得ている。
いまや、裁判所の考え方を歓迎し、国に裁判所が求める和解協議に応じることを求める声は広範な世論となりつつある。
わたしたちは、こうした国民の声を踏まえて、福岡高裁が「和解協議に関する考え方」で示した和解協議に、国が真摯に対応することを強く求める。
以上
<日本環境会議(JEC)理事会声明>
福岡高裁による和解協議の開始提案を全面的に支持し、 今後における速やかな進展を強く期待する
2021 年 5 月 11 日
日本環境会議(JEC)理事会
(JEC 事務局連絡先:jec-s@einap.org)
(JECHP: http://www.einap.org/jec/ )
去る 4 月 28 日、国営諫早湾干拓事業をめぐり国が漁業者側に潮受け堤防排水門の開門を 強制しないよう求めた請求異議訴訟差し戻し控訴審の第 6 回口頭弁論終了後、福岡高裁が 国と漁業者側に対して和解協議を開始することを求めた書面(「和解協議に関する考え方」) を提示した。この間、当該訴訟に重大な関心を寄せてきた日本環境会議(JEC)は、この福 岡高裁による和解協議の開始提案を全面的に支持し、今後における速やかな進展を強く期 待するものである。とくに日本環境会議(JEC)としては、上記の書面において、以下のよ うに述べられていることを高く評価したい。 (1)「当裁判所は、…(中略)…、狭く本件訴訟のみの解決に限らない、これを含む広い意味での紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決及び将来に向けての確固とした方策の 必要性と可能性を意識するとともに、本件訴訟を担当する裁判体として、これに何らか の方向性を作り出す機会を設定できないか、検討を続けてきたところである。」
(2)「その間を含め、当事者双方におかれても、諌早湾を含む有明海及びそれを取り巻く地 域の更なる再生・発展に向けて、長期間にわたり様々な取組を継続していることは改め ていうまでもなく、当事者双方の目指すところは、その範囲では完全に一致していると いえる。」
(3)「このような中、当裁判所は、現時点では、上記のような広い意味での紛争及びその一 部としての本件請求を統一的、総合的かつ抜本的に解決するためには、話し合いによる 解決の外に方法はないと確信している。」「この際、改めて紛争の統一的・総合的・抜本 的解決に向け、互いの接点を見いだせるよう、当事者双方に限らず、必要に応じて利害 関係のある者の声にも配慮しつつ(…中略…)、その上で当事者双方が腹蔵なく協議・ 調整・譲歩することが必要であると考える。そのためには、本件訴訟に直接関わる当事 者双方の努力と協力とが重要である(後略)。」
(4)「とりわけ、本件確定判決等の敗訴当事者という側面からではなく、国民の利害調整を 総合的・発展的観点から行う広い権能と職責とを有する控訴人の、これまで以上の尽力 が不可欠であり、まさにその過程自体が今後の施策の効果的な実現に寄与するものと 理解している。当裁判所としては、その意味でも、本和解協議における控訴人の主体的 かつ積極的な関与を強く期待するものである。」
(5)さらには、次のように締めくくられている。「有明海は、国民にとって貴重な自然環境 及び水産資源の宝庫としてその恵沢を国民が等しく享受し後代の国民に継承すべきも のとされ、国民的資産というべきものである。」「国民的資産である有明海の周辺に居住 し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して 将来にわたるより良き方向性を得るべく、本和解協議の過程と内容がその一助となる ことを希望する。」
やや詳しく抜粋したが、上記(1)~(5)に示されているとおり、今回の福岡高裁による 和解協議の開始提案は非常に的確な認識と判断にもとづくものとなっている。
日本環境会議(JEC)は、1979 年 6 月の発足以来、すでに 40 年余にわたり国内外におけ る各種の公害・環境問題の解決に寄与することを目的として活動してきた自然科学・社会科 学・人文科学にまたがる各分野の研究者や専門家を中心としたユニークな学際的ネットワ ーク組織である。この事務局のもとに、昨年(2020 年)4 月、「諌早湾干拓問題検証委員会」 (以下、<検証委>)を設置し、ほぼ毎月 1 回のペースで全体会議を積み重ねてきた。ま た、4 つの WT(ワークング・チーム)を立ち上げ、多角的観点からの検証課題に焦点を当 てた調査研究を推し進めてきた。そして、これまで約 1 年余の検証作業を通じて、かつての 諌早湾の干潟生態系が有明海の漁業および地域社会に豊かな恵みをもたらしていたこと、 諌早湾干拓事業の実施以降、この「宝の海」が瀕死の状況に陥り、この解決はもはや一刻の 猶予も許されない状況にあることを確認している。さらには、諌早湾干拓事業における「優 良農地の造成」や「防災機能の強化」といった 2 大目的が達成されているかを冷静に検証す るとともに、地域の防災への影響を抑えたかたちでの開門調査は十分に可能であり、漁業者、 農業者、周辺地域の住民が真摯に話し合うなかで、双方が納得し、豊かな地域社会をめざし ていくような和解が十分に可能であると考えている。
私たちは、以上を踏まえ、来る 7 月ないし 8 月をメドに上記の<検証委>による報告書 を公表する。さらに今秋以降、国および関係諸機関や関係諸団体、地元住民の皆さんに対す る具体的な「提言」や「要請」、全国的なシンポジウムの開催等の諸活動を展開していく予定で ある。今後、日本環境会議(JEC)は、諌早湾干拓問題の「統一的・総合的・抜本的解決」 に寄与すべく、微力ながらも尽力していくことをここに表明する。